2016年1月29日金曜日

外在化の効用

 
何回かカウンセリングルームに通っていただき、
『認知行動療法』に基づいて、ストレスの外在化という作業を行うと、
ご自分の今の状態が客観視できるようになってきます。
 
最初にカウンセリングルームにいらしたときは
そのことを考えただけでも沈鬱な気分になって、
「どうしたらいいんだろう」と悩んでいたことが、
まるで他人事のように思えてきます。
 
ある方は、「仕事上で一緒になる男性に対して、
なぜか緊張を感じたり、妙に意識したりして、居心地が悪い。
相手に嫌われているんじゃないか、
自分が何か気に障ることを言ったりしたりしたのではないか」と
悩んでいらっしゃいました。
 
しかし、なぜそう思われるのか詳しく訪ねたり、
何か直接、嫌われたと思うようなことを相手から言われたのか尋ねると
何もないとおっしゃいます。
 
いわゆる「被害妄想」なのか「自意識過剰」なのか、
そのあたりの単語が頭に浮かびましたが、
軽々に悩んでいる方にそうした言い回しは出来ないので、
何かある度に、ご自分の思いや考え、行動などを記録するという
『認知行動療法』のアセスメントシートの記入をお願いしました。
 
そうして、何回かのセッションが行われ、
だいぶラフに、つまり、ぶっちゃけた感じでお話ができるようになってきた頃、
そのセリフはクライアントさんと私の口から同時に出たのです。
 
その時のクライアントさんの訴えも、
「会議中、ある特定の人の顔をじっと見てしまうことがあって、
何かの拍子にこの人に嫌われたんじゃないか、嫌な思いをさせたんじゃないかと
思うんです」ということでした。
 
更に詳しく伺っても、
何か嫌われたと確信できるようなことをいわれたわけではないといいます。
 
「それって、被害妄想かもしれませんね」と私がいった時、
ふたり同時に顔を見合わせ、
「でた!」と
言ってしまったのです。
 
もちろんカウンセリングルームに笑い声が湧き起こりました。
 
これが「ストレスの外在化」によって、
クライアントさんがストレスのしっぽを捕まえた瞬間と言えるでしょう。
 
その後は、そう感じた時、どんな対応をしたらいいのかについて、
少し話し合いがなされ、
クライアントさんは「今度、やってみようと思います」と
今までとはちょっと違う対応をしてみることを決められ、
カウンセリングルームを後になさいました。

まだ、その結果は伺ってはいませんが・・・。
 
『認知行動療法』はこうしていつもの考え方や行動パターンをすこし変化させることで、
気持ちにゆとりを持たせたり、
疑心暗鬼から脱却させることを目指してします。
 
ひとりでできるようになれば、カウンセリングを卒業できるという
自立支援型の心理療法です。
 
「ご自身が気づく」
そのことを応援しているのです。
 
気づいたら、行動!です。
 
カウンセラーはその日まで、ナビゲートします。

2016年1月18日月曜日

ブリーフワーク

 
カウンセリングルームを訪ねてくださるクライアントさんには
ふたつのグループがある。
ひとつは悲しみを抱えている人達、
もうひとつは怒りを抱えている人達だ。
 
悲しみの原因はそれはもう人それぞれで、
母親から愛情を得られなかった積年の悲しみ、
夫や恋人から言われなき言葉の暴力を受けた悔しさのにじむ悲しみ、
中絶によって命を軽んじてしまったことへの後悔の悲しみ、
彼の裏切りを知った時の怒りを含んだ悲しみなど、
さまざまだ。
 
そうしたクライアントさん達は
皆、セッションで話している内に自然と涙があふれ出し、
話している半分以上が泣きながらになってしまうことも珍しくない。
 
私は時に思わずもらい泣きしそうになりながらも、
ペンをとる手を止めずに、カルテに書き込みつつ、
クライアントさんの目を見て、そのお話をじっと聴いている。
 
きっと今まで誰にも十分打ち明けたり、相談したりしたことのない
その溜めていた思いが涙と共に溢れ出てきているのだろう。
 
ここでなら話しても大丈夫と感じてか、
涙と共に堰を切ったように言葉も止まらなくなる。
 
こうした出せるだけの涙と思いを言葉にしてだす行為は、
それがブリーフワークといって、悲しみを克服するのにとても大切なのだ。
 
誰かにこの悲しみを聴いて欲しい。
誰かにこの悲しみを分かって欲しい。
 
その先どうしたら少しは楽になれるかは、十分に吐き出した後に考えればいい。
 
何回セッションしても、その話になると涙が溢れている内は、
まだ吐き切れていないと感じるので、
話を止めることなく、私は聴いている。
 
「時間薬」といういい言葉があって、
どんな悲しみも時間が癒してくれるという昔の人の言い伝えだ。
 
いいこと言うなと感心する一方で、
でも誰かに思いの丈をぶつけたり、絞れるだけの涙を絞ってしまえたら、
もっと早く自分の気持ちの整理がつくのになとも思ってしまう。
 
ブリーフワーク=悲しみの作業
 
安心出来る場所と相手にゆだねて、甘えて、
すっきりしてほしいと願っている。


2016年1月7日木曜日

ネット社会のクライアントさん達

 
2015年の年末、2016年の年始となぜか新しいクライアントさんが多く、
何人もの初対面の方とのカウンセリングがあった。
 
それぞれ抱えているお悩みは全く違うのだが、
面白い共通点があった。
 
それはネットでご自分の悩みや症状を検索して、
ご自分を「私、『アダルト・チルドレン』だと思うんです」とか
「『共依存』だと思う」とかというように
心理学の専門用語を使って、まるで病名のように決めてきて下さるのだ。
 
お話をよく聴けば、確かにそうした傾向がある方もいれば、
まったくそうではない方もいるのだが、
いずれにせよ、その専門用語を知っていることと、
ご自分がもしそうなら、カウンセリングで治るなら治したいと思って
連絡をくださっていることにビックリする。
 
以前はいろいろ悩ましいことがあって、
その鬱々とした気持ちを何とかしたい、誰かに話を聴いて欲しい、
だからカウンセリングを受けようと思ったというきっかけの方がほとんどだと
思うのだが、
今のようにネットでいろいろ専門的なことが分かってしまう時代は
そういう点でも違ってきているなと感じるのだ。
 
ご自分を『アダルト・チルドレン』と決めつけ、
「この性格とかって、治りますか?」とか、
「『共依存』傾向がある限り、自立できないのは、単なるわがままですよね」と、
自己分析なさるのは、研究熱心なことだけど、
そんなにご自分で判断して、決めつけないでと申し上げたい。
 
意外や、そうしてご自身で病名のように決めてきて下さっている方が、
決してそうとはいえないことも多く、
かえって悩みを深くしてしまっていることも少なくない。
 
病気を疑ったりしたときに、ネット検索は誰でもすることだけれど、
中身の素人判断は危険だと感じるので、
自分と相性のいいカウンセラーを捜すことにネット検索をご利用いただいて、
このカウンセラーの前でなら、正直になれると思えるかどうかを大切にして
カウンセリングを受けていただきたいと思う。

心理カウンセリングでは薬もでないし、即効性もないので、
風邪かなと思ったら、即、葛根湯!みたいな感じで治ることはないのです。

早ければ3回ぐらい、
長い方は年単位で通っていただいて、徐々に徐々に変化していくもの。

それにはカウンセラーとの信頼関係が何より大切ですし、
相性も重要だと考えています。

2016年1月4日月曜日

初詣に想う

 
 
 
明けましておめでとうございます。
皆様、どのようなお正月をお過ごしでしたか? 
 
私は毎年、おせちをほとんど手作りし、
更に、親族会のために勢い込んでパーティ料理を作るのが常なので、
結果、食べ過ぎて、すこし前まで頑張っていたダイエットも元の木阿弥になる、
そんなお正月でした。
 
もうひとつ、やはり恒例なのが、どこかの神社かお寺に初詣に行くことで、
それがどこに行くかは毎年コロコロ変わるという節操のなさで、
今年は何と、横浜に住んでいながら、千葉の成田山新勝寺まで行って来ました。
 
しかも、今回は朝6時50分上大岡発の初詣バスツアーだったので、
9時半には成田山新勝寺到着、
まだ参拝者が少ない状況でチャチャッとお参りを済ませ、
午後には香取神宮と、茨城県まで足を延ばして鹿島神宮までお参りするという、
弾丸ツアーだったのです。
 
本来、神社ではお願い事はせず、1年の無事を感謝し、
お礼を述べるのが筋なんだそうだが、
そうはいっても3社も廻れば、家族の健康や娘達にいいご縁がありますようになど、
つい神頼みしたくなるものですよね。
 
そして、おみくじをひき、その目が何とでるのか、
1年の運試しをしたくなるのもまた人の常。
 
私の今年最初(1年にせいぜい2回ぐらいしかひかないが・・・)のおみくじは
『吉』
 
吉は大吉の次にいい目だそうだから、なかなか気分がいいものです。
一緒にひいた娘は大吉だったから、もっとウキウキでしょう。
 
何しろ、この娘、
『凶』を引き当てるのが得意技といってもいいぐらい、
おみくじでいい目がでたことがない不運な娘。
 
以前、鎌倉八幡宮で家族4人でおみくじをひいたら、
私とその娘が凶をひき、あわてて、娘だけもう1度ひいたら
また別の凶がでるという恐ろしい事件があったのです。
 
大吉がでたり、吉がでると、とても嬉しいけど、意外とその後は内容も忘れ、
お守りの中に大事にしのばせたきりになったりします。
(大吉や吉がでたら、結ばず、持って帰った方がいいらしい)
 
しかし、『凶』がでたりすると、ちょっとさい先が悪い感じで、かなり凹みます。
 
そのおみくじは、利き手ではない方の手で結んで置いてくるといいらしいのですが、
そんなに器用に結べるはずもなく、
その落ち込んだ気分は案外、後々まで尾を引きます。
 
そんなに気にするなら、
最初からおみくじなんてひかなきゃいいのにと思うのですが、
何となく年の初めの運試しをしたくなるから不思議なものです。
 
 
 
さて、皆様の今年の運試しはいかがでしたか?
 
年の初めは心新たに始めたいもの。
ぐずぐずとくすぶった人間関係や、煮え切らない自分と向き合い、
自分を見つめるのに、年の初めはいい時期かもしれません。
 
『凶』も考えようによっては、それ以上落ちることはない、
あとは上昇するだけとも言えます。
そんな風に自分のことを見つめ、見方を変えられるのは、
ご自分だけなのです。