2016年7月11日月曜日

『家系図カッター』 著者の心の闇

 
私が好きなテレビ番組のひとつが、土曜の夜10時からEテレでやっている
「スイッチインタビュー」である。

一昨日のゲストは歌手の平井堅と、アートディレクターの増田セバスチャンだった。

増田セバスチャンに関してはよく知らなかったが、
きゃりーぱみゅぱみゅのアートディレクションをした人と聞いて
「そうか」とただちに理解した。

世界に『KAWAII』を発信した、産みの親だ。

原宿に『6%DOKIDOKI』というショップを開いて、
ある種の若い女の子達に圧倒的な支持を得ている人だということも知った。

そのいかにもアートディレクターといった風貌の45歳の男性の生い立ちや
成功までの道筋を事細かに記した自叙伝ともいうべき本が
「家系図カッター」である。

その中で、氏は「自分は生涯、決して子孫を残すつもりはない。
自分を産んだ親のことや家庭環境を考えたら、
その血筋を残すことがあってはならないと考えている」と断じている。


あの華やかで可愛い世界の作り手の向こう側に何があったのか。
凄く興味を引かれ、
私は昨日、テレビで紹介された「家系図カッター」を買いに書店に走った。
そして、一気に最後まで読んだ。

自身も分かっているようだが、彼はアダルトチルドレンである。

ネグレクト(育児放棄)に近い料理を全くしない母親。
秘密裏に離婚届を勝手に出し、できちゃった婚で中国人女性と家をでた父親。
リストカットや服毒自殺未遂をくりかえす妹。

そんな家庭環境の中で、心に傷を負った少年は自分の居場所を求めてさまよう。

リアルに吐かれたその内容が、
原宿のお店やきゃりーぱみゅぱみゅの世界観と離れていればいるほど、
切なく何かを訴えかけてくる。


私の元には「なぜか先のことを考えると心配で心配で・・・。
考えただけでトラウマがよみがえって、声が震えて話せない自分がいる」などと
訴えてくる人がいる。

母親との諍いが絶えず、
何をやっても何を言っても、なぜか悪い結果を招いてしまうという人も。

現実には自分の家族や友達とはうまくやっているのに、
ひょんなことから、幼い時の自分がよみがえるのか。

自分の幼い娘にも
母親から受けたと同じことをしてしまうかもしれない恐怖があるという。

何かをしようとしたときに決まって思い出す母親からの叱責。
見下した視線。

幼い時におびえた感情が堰を切ったように溢れて、涙になってこぼれ落ちる。

様々な様子を見せる彼女達は、皆、心に空虚な穴を抱えている。

増田セバスチャンの場合はその事実を全部、本という形に吐露することで、
クリエイター生活15年の時に、一度、区切りをつけたかったという。

現在は20周年を迎え、ますますメジャーになり、
世界を舞台に自身の世界を発信できるようになり、認められている。

同じような家庭に育った女の子達が、なぜか自分の周りには集まってきてしまうと
氏は本の中で嘆いているのだが、
それはある意味当然のことで、
鋭い嗅覚で彼女達は理解者を探し、癒しを求めている。

どこかで自分と向き合い、
得られなかったものを嘆き、
そんな幼い自分を抱きしめる。

そうした場所を上手に見つけて、自分を解放してあげることが必要なのだ。

空椅子の技法などのカウンセリングにも
そうした効果が認められています。
よかったら、一度、相談にいらしてください。